研究紹介

研究概要

分散センサ、信号処理、認識理解、データベースなど、情報システムはあらゆる面で飛躍的に発展を続けているが、それを利用する人間の「認知・判断・運動」能力には限界があり、その能力は内的な状態に依存して変化する。人間がその時点で発揮しうる能力と、システムが人間に想定する機能との間に齟齬がある場合、両者の間には「過信」が生じる。例えば人間を系に含むシステムの最適化が、「システムに対する人間の関与を最小化すること」で実現されるとき、人間はシステムに過度に依存した状態に陥り、「認知・判断・運動」能力が著しく低下する。過信状態では本来人間が持つ能力が阻害され、わずかな外乱に対しても、結果としてシステム全体が人間の意図とは全く異なる動作をする場合がある。情報システムの社会的重要性が高まるに従い、「過信」が思わぬ事件や事故につながり、安心・安全な社会の脅威となりつつある。人間と調和する情報環境には「過信を生まない」視点が必要である。そこで本研究では、人間行動に内在する「認知・判断・運動」特性を統合的にモデル化し、観測された行動から過信を検出する方法を確立し、「過信」を招かない情報システムの構築技術を確立する。

Kashin

  • 公開日時:2009年11月15日(日)21時59分
  • カテゴリー:概要

行動モデルに基づく過信の抑止

人間と共生する情報環境の実現には未だ多くの課題がある。本プロジェクトで「過信」を取り上げた背景には、「人間と情報システムの相互理解が重要かつ未解決な課題であるとの認識がある。数理システムである情報システムには、人間の内的な状態のモデルなくして、人間の判断や行動を理解することは困難である。環境認知から運動物理に至るまで一貫した数理モデルで人間行動を記述し、人間行動の原理と多様性を正しくシステムに組み込むことが必要である。「過信」の研究は、映像・音声の認識やテキストの理解といったインタフェース技術だけでなく、それらの情報を射影する数理行動モデルの構築という行動理解の本質的課題を含んでいる

過信研究の重要性

「過信」状態は、人間の行動に内在する「認知・判断・運動」特性がシステムの期待と一致しない状態であり、その検出には「認知・判断・運動」に跨る行動モデルの構築が必要である。しかし「認知・判断・運動」を統一的視点で捉えた学術的枠組みはこれまで皆無であると言ってよい。これは、1)人間を含むシステムにおいて、「人間」、「システム」及び「両者を取り巻く環境」を大規模に観測記録した研究資源が十分蓄積されていないこと、2)「認知-判断系」(心理特性)の表現に適した数理体系と「判断-運動系」(身体特性)の表現に適した数理体系の相互理解が進んでいないことに起因している。本提案は、「過信」の研究を通じてこれらの問題を具体的に解決し、「認知・判断・運動」の統合的な数理モデルを提示するものである。

「過信」研究の学術的背景(複合数理モデルの展開)

 環境情報は映像や音響により連続量として認知され、判断は「離散量の選択」に対応付けられる。一方、判断の下での運動は制御を伴う身体物理を介して表出される。すなわち、「認知・判断系」と「判断・運動系」は、それぞれ連続/離散変換、離散/連続変換に対応付けられる連続系と離散系の複合システムである

  • 公開日時:2009年11月15日(日)21時54分
  • カテゴリー:概要